最近ファッション関係でも「サスティナブル」ってよく聞くようになりましたよね。
「サスティナブルファッション」とは何か、どういうことがその条件になるのか、まとめました。
【1】「サスティナブル」とは?
1.「Sustainable」という言葉
まず「サスティナブル」とは。
「Sustainable」=「持続可能な」という意味の英語です。
簡単に言えば、「環境、人権、平和に配慮すること」を意味します。
「Sustainable」という言葉が広まった背景は、1987年に行われた「国連環境特別委員会(ブルントラント委員会)」。
この委員会のレポートで、「サスティナブル」という言葉が使用されたことで
環境に関する言葉として世界中に広まりました。
この国連環境特別委員会のレポート内容を要約すると
「二酸化炭素による温暖化や酸性雨、森林破壊などの環境破壊が世界中で深刻化している問題に対して
環境保全と開発の調和を目指す必要性がある」という内容でした。
かみ砕いて言えば、私たちが生活をするために行われる開発や営みで、環境破壊しないようにしましょう!ということです。
また、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」において
環境への配慮の他、人権にまつわる不平等やジェンダー問題、平和についても掲げられています。(出典:外務省)
地球に生きる全て、環境も人間も含めて、繁栄、持続するために「環境、人権、平和に配慮すること」。
それが「サスティナブル」なのです。
2.「サスティナブルであること」って?
と、思った方。
その考え方はサスティナブルじゃないです!
サスティナブルであることは、企業はもちろん、働くビジネスマンから、子育てに忙しいママさん、専業主婦、学生、高齢者・・・
物を購入する、という行為をする全ての人が取り組むべき課題とされています。
例えばあなたがシャツを買おうとした時。
世の中に販売されているシャツはいっぱいありますよね。
どこで、どのシャツを買うのか、様々な選択肢があります。
どのブランドの商品を買うか、そのシャツは何が素材なのか、そのデザインは流行りが廃れたら着られないようなものか?
それを考え、環境や人権に配慮された企業から買う、環境配慮された素材のものを買う、長持ちするデザイン(無駄な廃棄物を増やさない)を買う。
配慮されたものを選んで購入、使用することが、サスティナブルであることなのです。
じゃあどんなものがサスティナブルな商品、どんなところがサスティナブルな企業なの?
って、なりますよね。
そこでファッション業界におけるサスティナブルの条件をまとめました。
【2】ファッションにおけるサスティナブルの条件
条件によって、企業が関与すること、消費者が関与すること、両方関与すること、と異なりますので
タイトル横アイコンを参考にご覧ください。
1.配慮された素材

サスティナブルであるための条件として、最もわかりやすいものが素材です。
サスティナブルな素材を企業が選んで使用し、消費者はサスティナブルな素材で作られたものを選んで購入する。
そのためには企業はたゆまぬ技術革新や調査が必要とされます。
そしてなにがサスティナブルであるかを判断するため、消費者は正しい情報を持つことが重要です。
配慮された素材と言うと簡単ですが、その配慮の要因がとんでもなく多いのが素材というもの。
例えば環境配慮のための要因は、こんなものがあります。
● 材料の二酸化炭素排出量
● リサイクル可能な繊維かどうか
● 生産過程のエネルギー、化学物質の使用量
● 生産工場間の輸送
● 輸送時の保存に使用される化学物質
● 小売店と消費者への出荷
● 材料の手入れと洗浄方法
キリがないほどいっぱい!
そこで、これらのことを考慮されている素材がこちら。
①オーガニックコットン
オーガニックコットンは、肥料、農薬、その他の土地に有害な合成農薬を使用することなく栽培されています。
通常のコットンは、世界の衣類の50%を占める一般的な衣料ですが、
世界の殺虫剤の25%と農薬の10%を使用しているとされ(※2015年出典内容。出典:Organic It’s worth it)、持続可能とは言えない素材です。
正しくオーガニックな農法で栽培され認証されたものは、GOTS認証やOCS認証という厳しい審査を受けて認証されます。
②カラーコットン(自然着色)
私たちが見るコットンは、多くのものが漂白され、染料によって着色されたものです。
コットンはもともと茶色や緑のカラーですが、遥か昔からコットンを漂白・着色して使用するのが通常でした。
エコロジーが意識され始めた1980年代頃から、自然で着色されたカラーコットンが注目されはじめ、
現在サスティナブルな素材として、普及されるようになりました。
③大豆
大豆の服、って聞き覚えがない方が多いですよね。
1937年に発明されたものですが、第二次世界大戦後にレーヨン、ナイロン、綿の台頭により流通しなくなった繊維です。
しかし大豆製品(豆腐など)の副産物である外皮を使用する、とてもエコな素材。
世界がサスティナブルを意識するにつれ、近年注目されてきた素材です。
綿や麻ほどの耐久性はありませんが、柔らかく弾力性があることから、海外では「ベジタブルカシミア」や「大豆シルク」などと呼ばれています。
④大麻(ヘンプ)
ヘンプは成長において水の必要性がかなり少なく、多くの害虫や病気に耐性があります。
なので、農薬や化学肥料を必要とせず、成長が早いなどの理由から、サスティナブルな素材として注目されています。
日本で「麻」として出回っているものはリネンかラミーが多く、
ヘンプは麻という表示ではなく、指定外繊維(大麻)という表示になります。
なんとなく硬そうなイメージがありますが、近年の技術で柔軟で柔らかく改良されつつあります。
⑤竹
竹もヘンプと同じく、農薬や化学肥料を必要とせず、サスティナブルな素材とされています。
ただ、硬い丈を繊維にする難易度から、出回っているものはまだ少ない状況です。
竹を原料とする合成繊維の「バンブーレーヨン」を「竹」と表示して販売する企業が増え、海外では摘発された企業もあります。
環境に優しい衣料は「バンブーレーヨン」ではなく、「バンブーリネン」ですので、注意してくださいね。
⑥PET
「ポリエチレンテレフタレート」というポリエステルの一種で、私たちに馴染み深いペットボトルの素材のことです。
つまりリサイクルされた素材なので、ペットボトルなどの廃棄物を削減することが大きなサスティナビリティです。
また、1からポリエステル素材を衣料繊維にするより、
リサイクルポリエステルを衣服にする方が30%少ないエネルギーで済むとも言われています。(※2019年の出典。出典元:Wiley online library)
⑦リヨセル(テンセル™リヨセル)
リヨセル、またはテンセルとは、ユーカリの木材パルプから作られる繊維のことです。
この二つの名前の違いは商標で、元の素材は同じとされています。
各々の商標を持っていたオーストリアのレンチング社とイギリスのコートルズ社は2004年に合併し、
素材の総称をリヨセル、ブランド名をテンセルとしました。
リヨセルはユーカリを溶剤で溶かして作る再生繊維で、溶剤は回収して再利用するため廃液が出ないエコな素材です。
⑧モダール(テンセル™モダール)
こちらもリヨセル同様、レンチング社の商標が主に流通しているもので
リヨセルがユーカリが原料であるのに対し、モダールはブナが原料です。
そしてもちろん、有害廃棄物を出さないエコ素材です。
木が原料にもかかわらず、綿の2倍の柔らかさと洗濯への耐久力がある(出典:Tencel)とされています。
⑨ヴィーガンレザー(ピニャテックス™など)
ヴィーガンレザーは、人口皮革のこと。
ピニャテックスはその一種で、ゴミとなっていたパイナップルの葉をレザーに加工したものです。
動物の天然革は加工時に有毒化学物質を使用し、それが排出されると、水生生態系に損害を与えたり、人体にも影響を及ぼすことがあります。
ヴィーガンレザーは有名ブランドが取扱いを広めつつあり、2019年にシャネルがピニャテックス製の帽子を発売した他、
H&Mやヒューゴボスも素材として使用したコレクションを発表し、世界的に注目されています。
⑩ECONYL®(エコニール)
エコニールは海洋汚染の大きな要因となっている、プラスチックごみで作られた再生ナイロンです。
漁網をはじめ、海へ投棄されたプラスチックごみを回収することで海洋環境保全になるサスティナブル素材。
プラダが2021年末までに、使用するナイロンを全てエコニールに置き換える取組みを発表し、話題になりました。
エコニールはステラマッカートニーやH&Mでも使用されており、サスティナブル素材として注目されています。
⑪Sorona®(ソロナ)
ソロナはアメリカのデュポン社によって開発された糸、あるいはその糸で縫製された生地のこと。
糸に使用される樹脂のうち、37%を再生可能な植物由来のものを使用しています。
植物から抽出された糖類を発酵させ、TPA(テレフタル酸)と分子結合させて生まれる高性能ポリマーです。
ソロナの生産は、一般的に衣服に使用されるナイロンと比較するとエネルギー30%削減、温室効果ガス63%削減(ナイロン6との比較、出典:DUPONT)しているとされます。
柔らかく、伸縮性と耐久性に優れた新しいエコ素材です。
⑫クモノス®(Qmonos)
名前のとおり、クモが巣を作る糸を主成分とする、次世代バイオ素材です。
鉄鋼以上に強靱で,ナイロン以上の柔軟さを出すことが可能で、衣料以外にも工業製品や医療製品にも使用が期待されています。
ザ・ノース・フェイス とコラボブランドを立ち上げ、2019年についに実用化され、ダウンジャケットが発売されました。
サスティナブルが世界中のアパレル企業の課題とされる中、今後の普及が期待されます。
(画像出典:Goldwin)
2.公正な環境作り 
米国労働省によると、アパレル産業自体が強制労働や児童労働の温床になっているとのことです。(出典:Bureau of International Labor Affairs
日本にいる私たちには具体的にピンと来ない話ですが、
世界中で販売されている衣服の原材料は世界中から提供されており、その中には発展途上国や貧困国も含まれます。
消費者には見えていないそういった過程が、強制労働や不当な賃金の労働の温床になっているようです。
ファッション企業は、自社の製造や原材料に携わる労働者の雇用形態、環境を調査することが倫理的な企業として要されています。
NPO法人のOxfamのレポート(出典元:Oxfamによると、ブランドがサプライチェーン内の支払い賃金を負担すれば
衣料品の価格の1%にも満たないとの研究結果も出されています。
日本でもブラック企業問題が取りざたされていますが、海外含め国内でも、きちんとした労働環境を作ることは
サスティナブルな企業として重要な条件です。
3.現地生産 
衣料品の輸送では、大量の二酸化炭素が排出され、環境破壊の一因となっています。
なので、輸送は最小限の距離で済むように、とのことで現地生産がサスティナブルであると言われることもあります。
しかし、これはよーく考えた方がいい内容です。
まず現地生産にした場合、メーカー企業の下請け、さらに下請けの下請け・・・と続く、多くの労働者たちの雇用が失われる可能性があります。
また、距離が近い=環境破壊要因が少ない、と必ずしも言えません。
例えば、日本のある企業が衣服の素材を海外から仕入れるとしましょう。
A国の方がB国より近く、輸送距離が短い場合、当然A国の方がサスティナブルと思います。
しかし、もしA国がバンバン環境破壊に繋がる原材料の使用や生産方法を行い、しかも過酷な労働環境だったとしたら?
場合によっては生産方法が配慮されているB国から仕入れる方が、環境に優しい可能性もあるのです。
いろんな要因があって、複雑ですね。
ファッション企業は、それらをきちんと調査し、最も適切な仕入れ先や委託先を選択することがサスティナブルと言えるでしょう。
4.透明性

企業やブランドは環境問題についての取組みや、社内の労働環境、安全性について、きちんと明示しているかが大事です。
環境や人権に配慮されていない実態があれば、そういったことには何も触れてないことが多いです。
今はスマートフォンで簡単にささっと企業ホームページもチェックできる時代。
サスティナブルであろうと考えるなら、買おうとする服がきちんと環境や人権に配慮されたものか、
それとも全く明示されておらず、もしかしたら環境破壊の一因や人権問題の一端を担うような生産をされているかもしれないのか。
それを確認し、配慮されたブランドや企業から購入すること。
それがサスティナブルであるための大切な条件です。
5.衣類交換、中古 
日本ではまだあまり認知されていないですが、衣類交換会、衣類交換パーティーというものがあります。
こんなもの、持ってる方意外と多いのでは?
● サイズが合わなくて着られなかった服
● 数回着たら飽きて着なくなった服
● 着るタイミングがなくて、クローゼットの奥に眠る服
そういった服を持ち寄って、気に入った服があれば持って帰る。
(※コミュニティーによってルールは異なる可能性があります)
服を持っていけばゴミを増やさず、服を貰えば無駄な出費も抑えられる、というウィンウィンなコミュニティーです。
衣類交換の機会が海外では増えています。
日本でも徐々に増えているので、気になった方は「衣類交換」や「洋服交換会」などで検索してみてください。
また、着なくなったけどまだ着ることが出来る服は、フリマや中古ショップに出す、購入するというのもゴミの減少につながります。
最近はメルカリなど、気軽に利用できるようになりましたよね。
衣類交換や中古出品、購入することは、最も手軽に始められるサスティナブルです。
6.アップサイクル(リサイクル)

リサイクルという言葉は、もう日本人にもすっかり浸透してますね。
ほとんどの繊維製品はリサイクル出来ます。
しかし繊維製品のリサイクルは技術があまり進化しておらず、リサイクルしても低品質の最終用途にグレードダウンしてしまうんです。
例えば一般的な布のリサイクルは、布を引き裂いて、前より短い繊維にしてしまう。
家庭内での布のリサイクルは、着なくなった古着をぞうきんにする。
グレードダウンしてしまうこれは、ダウンサイクルと呼ばれています。
そこで、これからのリサイクルとして注目されているものが、アップサイクル。
アップサイクルは「創造的再利用」とも呼ばれ、リサイクルするものを、元よりいいものとして作り変えることです。
アップサイクルは、既に環境配慮された素材の話であったように、ゴミから素材を作ったり、廃棄となった余りの生地から製品を作るなどのことを指します。
サスティナブルに注力する企業が増え、最近では企業が続々とアップサイクルに取り組んでいます。
BEAMSは、アップサイクルの衣類ブランド「BEAMS COUTURE」を立ち上げたり、
URBAN RESEARCHも、アップサイクルブランド「commpost」を立ち上げています。
消費者は、アップサイクルブランドから購入することで、材料が循環し、ゴミの削減につながる=サスティナブル。というわけです。
7.スローファッション

スローファッションとは、上質な服を長く大切に着用する価値観のこと。
安い服を着て、すぐにダメになり、また購入して・・・という対極にあるファストファッションでは
ゴミの増加につながり、かつ新たな大量生産に使用するエネルギーや環境破壊のリスクを伴うので
サスティナブルを考えるなら、スローファッションであることも大事です。
スローファッションのための服は、こういったもの。
● 流行に左右されないデザイン
● 品質がよい
● 機能的である
これがそろえば、長く着られますね!
8.ミニマリズム 
これもスローファッションと同じような考え方です。
ミニマリズム、つまりミニマルとは、「最小限の」という意味。
シンプルな形や色の服で、余計なものを身に着けない価値観を、ミニマリズムと言います。
シンプルであれば流行にとらわれず、長く着ることができる。
そして余計なものがない=ゴミが増えない、ということですね。
余談ですが、北欧のアパレルブランドは、ミニマルでオシャレと世界中のファッショニスタたちに注目されています。
北欧のブランドは質がいいものを作るとして、世界中から高い評価を得ているんです。
サスティナブルに興味がある方には、北欧ブランドがオススメ。
北欧ブランドについてもチェックしてみてください。
今回はメンズの北欧ファッションに注目し、
その北欧の美的哲学から特徴、そしてオススメのブランドまでご紹介いたします!
【3】まとめ
サスティナブルについて、ご理解頂けましたでしょうか?
環境や人権問題、正直なかなか真剣に考えて行動するのは難しいところがありますよね。
急になにもかも配慮されたものに変える、というのも様々な問題があります。(急に切り替えをしたら、それこそゴミ問題!)
近年は有名ブランドたちが本腰を入れ始めたので、これを機に、まずサスティナブルという考え方が広まることが大事な一歩です。
どこにでもあるファッションアイテムを買うとき、みんなが「サスティナブル」を思い出せるようになればいいですね。
サスティナブルなファッションブランドについては、別でこちらにまとめています↓